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生成AIで作った児童ポルノ所持に問われた元教師 全国初の事例の裁判始まる 現状には”法の限界”も (26/03/18 16:06)
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インターネットなどを悪用した性犯罪が増えています。
教師のグループによる盗撮画像・共有事件で、
メンバーの1人が問われているのは、生成AIで作られた児童のわいせつ画像の所持。
今の法律で問うことができるのか、その実状を取材しました。
3月17日、名古屋地裁で開かれた裁判。
黒のスーツにマスク姿で証言台に立ったのは、
名古屋市の元小学校教師・水藤翔太被告(35)。
教師による盗撮グループのメンバーです。
水藤被告は2025年3月、実在する児童の写真をもとに、
生成AIで作られたわいせつな画像を所持した罪などに問われています。
「間違いありません。本当に申し訳ありませんでした」
水藤被告は、起訴内容を認め、謝罪しました。
水藤被告が問われているのは、児童買春・ポルノ禁止法違反。
生成AIで作られたわいせつ画像の所持にこの法律が適用されたのは、
全国で初めてです。
生成AIを悪用した性被害の実態は
生成AIを悪用した性被害は、増加傾向にあります。
「2025年の3月~6月にかけて行った調査では、児童のものと思われる性的ディープフェイク被害画像・動画が250件以上発見された」
(ひいらぎネット 永守すみれ 代表)
永守すみれさんが代表を務める「ひいらぎネット」は、
デジタル技術を悪用した性暴力を防ごうと、
SNSなどのパトロールをしています。
永守さんによると、2025年3月から4カ月間の調査で実在する児童の画像を「悪用」した性的動画・画像が、
少なくとも250件。
2026年3月からの調査では、すでに100件ほど確認されているということです。
「1枚の画像からヌード画像を作るものだと、10数秒で画像が生成できてしまう。『早い・安い・簡単』なんです。『自分の知り合いのこの子の性的な画像が見たい』と、それを自分の意志で実現可能なツールがある」
(永守代表)
知らないうちに性的画像をつくられ、SNSで拡散されるリスクもある生成AIの技術。
しかし現状、対策をとることは難しいと話します。
「正直に言うと完璧な自衛は多分不可能。児童が被害者になるCSAM(性的虐待のコンテンツ)を作るものについては違法とする、あるいはアクセス制限をするなど、作れない環境をつくっていくのは1つの方法かと思っています」
(永守代表)
デジタル性被害を取り締まる指針に
一方、刑法に詳しい専門家は“法の限界”を指摘します。
「現行の法律は、性的な姿態・様子をとらされている“実在の児童”に対する侵害が念頭に置かれている。顔が実在する児童で、体が絵やCGのものは児童ポルノにあたらないと考えられていた。少なくともその対象児童が実在している必要はあるということ」
(名古屋学院大学 鈴木一永 准教授)
水藤被告の裁判の結果は、今後のデジタル性被害に対する取り締まりの方針を左右する重要な指針になると話します。
「画像自体が『実在する児童の姿態である』と言えるかどうかが、一番のポイントになる。(技術の発展で)児童・被害者に対するダメージはどんどん大きくなる。そういう意味では新たな立法をしてでも対応することは必要だと思います」
(鈴木准教授)
弁護士・三輪記子さんの見解
これがいまの法の限界となるのかどうか。
画像自体が実在する児童であるのかどうかということもポイントです。
弁護士の三輪記子さんに聞きました。
「児童ポルノ禁止法は何を守るのか。対象になった実在する児童を保護すると考えると、実在しないものだと保護する主体がいないので、"実在性が必要"とされている」
「実在していなくても処罰の対象にすると、誰にも見せなくても持っているだけで処罰の可能性があるというのは、かなり私的な領域に刑罰が入り込んこんでくる。本当にそんな処罰はできるのかという検討も必要だと思う」
「一方で、生成AIを提供している事業者がそれを可能にしているという考え方もできる。そういったスレスレの画像を生成できてしまうことをこのまま社会が放置して良いのか、議論が必要になる。現行のやり方ではなかなか処罰しきれない領域があると、"けしからんからダメ"という雑な議論ではなく、丁寧な議論を積み重ね、どこからどこまでを処罰するべきか、しなければいけないのか検討しないといけない」
プラットホームにも規制が必要では
さらに、ひいらぎネットの永守代表の調査では、
元になる画像について「体育大会」や「修学旅行」「卒業アルバム」などの写真が使われることもあり、
中には名前とあわせて公開される事例もあるといいます。
そして、同級生など同世代の知り合いが性的ディープフェイクを作ったり、
作ったものをネットに投稿したりするケースもあるということです。
「これはネット上に公開した場合、名誉毀損や侮辱罪で処罰する可能性は十分あります。公開された後に関しては、処罰の可能性は十分ある。そこは現行法でも対応できる。公開されるプラットホームをそのまま放置して良いのか、そういう方向性の考え方もあると思います」
(三輪弁護士)
プラットホームも含めて規制することで被害者も加害者も生まないという、
子どもを守る新しいルール・仕組みが必要とされているのかもしれません。